作用

左様ですか

集合上の作用

集合上の左作用

集合𝐺を与える.

(集合上の)左𝐺-作用(left 𝐺-action over set)とは,以下の2つのデータからなる.

左作用をactと表すと,各𝑔𝐺に対し, act ( 𝑔 , - ) なる𝑋上の変換を誘導する.つまり,集合上の左作用は,単に𝑋上の変換を𝐺の元でラベリングしたに過ぎない.

右作用も同様に定義できるが,ただの記法の問題で区別する意味はない.以下では基本的に左作用を考える.左作用を単に単に作用(action)と呼ぶこともある.

作用準同型

を与える.

写像 𝑓 : 𝑋 𝑌 𝑔 𝐺 , 𝑥 𝑋 , 𝑓 ( 𝑔 𝑥 ) = 𝑔 𝑓 ( 𝑥 ) を満たすとき,集合上の左𝐺-作用準同型(homomorphism)と呼ぶ.

積の記号を省略しているためわかりづらいが,𝑓は単に𝑀の元を𝑁に送るだけで無く,𝑀の作用も,𝑁の作用に送っている.

同型

全単射な集合上の左作用準同型集合上の左作用同型(isomorphism)と呼ぶ.

部分作用

を与える.

部分集合𝑌𝑋 𝐺 𝑌 𝑌 を満たす(つまり終域の制限により𝐺-作用となる)とき,部分左𝐺-作用と呼ぶ.

応用上大切なのは,𝐺が何らかの代数的構造を持っている場合で,このとき𝐺の代数的構造を作用に写すような条件を付す.ともあれ,まずは集合上の左作用に関する用語を定義しておこう.

用語

安定部分集合

を与える.

部分集合𝑌𝑋で, 𝐺 𝑌 𝑌 を満たすものを安定と呼ぶ.

不変部分集合

を与える.

部分集合𝑌𝑋で, 𝐺 𝑌 = 𝑌 を満たすものを不変(invariant)と呼ぶ.

不動点

を与える.

𝑥𝑋(からなる一元集合)が安定(ゆえに不変),つまり 𝐺 𝑥 = 𝑥 を満たすとき,𝑥不動点(fixed point)と呼ぶ.不動点の集合を 𝑋 𝐺 { 𝑥 𝑋 | 𝐺 𝑥 = 𝑥 } と書く.

軌道

を与える.

𝑥𝑋に対し, 𝐺 𝑥 = { 𝑔 𝑥 | 𝑔 𝐺 } 𝑥軌道(orbit)と呼ぶ.

安定化部分集合

を与える.

𝑥𝑋に対し,𝐺の部分集合 𝐺 𝑥 { 𝑔 𝐺 | 𝑔 𝑥 = 𝑥 } 𝑥安定化部分集合(stabilizer subset)(または固定化部分集合,等方部分,小集合)と呼ぶ.

作用の付加的な性質

自明な作用

集合𝐺を与える.

𝑋𝐺-作用で,𝐺全体が𝑋の恒等変換を誘導する,つまり 𝑥 𝑋 , 𝐺 𝑥 = 𝑥 を満たすとき,自明な作用(trivial action)と呼ぶ.

推移的

集合𝐺を与える.

𝐺-作用𝑋 𝑥 𝑋 , 𝐺 𝑥 = 𝑋 を満たすとき,作用𝑋推移的(transitive)と呼ぶ.

鋭推移的

集合𝐺を与える.

𝐺-作用𝑋 𝑥 , 𝑦 𝑋 , ∃! 𝑔 𝐺 , 𝑔 𝑥 = 𝑦 を満たすとき,作用𝑋鋭推移的(sharply transitive)と呼ぶ.

平行移動とか.

マグマ上の作用

作用に代数構造を入れていこう.まずは最も基本的な閉じた代数的構造であるマグマ上の作用を見る.

マグマ上の左作用

マグマ𝐺を与える.

(マグマ上の)左𝐺-作用(left 𝐺-action over magma)とは,以下の2つのデータからなる.

これらは以下を満たす.

マグマ上の右作用

マグマ𝐺を与える.

(マグマ上の)右𝐺-作用(right 𝐺-action over magma)とは,以下の2つのデータからなる.

これらは以下を満たす.

集合上の作用と異なり,直ちに左作用と右作用がそのまま対応することはないが,定義より明らかに,マグマ𝐺上のマグマ上の左作用は,反対マグマ𝐺op上のマグマ上の右作用と対応する.

準同型同型部分作用集合上の作用と同様に定義される.

左作用は右結合

マグマ𝐺を与える.

証明

𝐺-作用𝑋の方を示す: 𝑓 ( 𝑔 ( 𝑥 ) ) = 𝑓 ( ( 𝑔 ) 𝑥 ) = ( 𝑓 ( 𝑔 ) ) 𝑥

もちろん,𝐺が結合則を満たす,つまり半群であれば,左結合と右結合は一致するので,()で囲む必要が無くなる.

性質

左単位的マグマの作用

群作用は軌道に著しい性質を持つため,目標はその確認となる.

左単位的マグマ上の左作用

左単位的マグマ左単位元をもつマグマ𝐺を与える.

(左単位的マグマ上の)左𝐺-作用(left 𝐺-action over left-unital magma)とは,以下の2つのデータからなる.

これらは以下を満たす.

右作用も同様に定義される.準同型同型部分作用も同様.

左単位元によるマグマ上の左作用は恒等変換を誘導する必要はなかったが,それを要求している.

左単位元マグマ上の作用の特徴付け

𝐺左単位的マグマ𝑋マグマ上の左作用とすると, ( 𝑋 左単位的マグマ上の左作用 ) ( 𝐺 𝑋 = 𝑋 )

証明

性質

群作用

群作用の性質

まず,安定化部分マグマと同様,安定化部分群となる.

𝐺上の左作用𝑋に対し, 𝑔 𝐺 , 𝑔 𝑋 = 𝑋

軌道の類別

𝐺上の左作用𝑋に対し,𝑋上の二項関係 𝑥 𝑦 𝑦 𝐺 𝑥 は,軌道が等しいという同値関係 𝑥 𝑦 𝐺 𝑥 = 𝐺 𝑦 に等しい.

軌道空間

軌道が等しいという同値関係 𝑥 𝑦 𝐺 𝑥 = 𝐺 𝑦 による商集合を 𝑋 𝐺 = 𝑋 𝐺 と表し,軌道空間と呼ぶ.

軌道の類別が可能だから,軌道空間の任意の元 𝑌 𝑋 𝐺 は, 𝑦 𝑌 を用いて, 𝑌 = 𝐺 𝑦 の形に書ける.