圏
圏(category)とは以下の4つのデータからなる.
これらは以下の2条件を満たす.
- 結合律
- 射 に対し,以下が成り立つ:
- 恒等律
- 射 に対し,以下が成り立つ:
始域・終域
圏を与える.
射 に対し,をの始域(domain),をの終域(codomain)と呼ぶ.
片足を上げた状態のことではない
具体例を一々書くと被りが多くなるしキリがないので,最初に書いておく.それぞれの定義はいずれわかる.
圏 | 対象 | 射 | 同型射 | 終対象 | 始対象 | 部分対象 | 商対象 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
全ての集合 | 全ての写像 | 全単射 | 一元集合 | 空集合 | 部分集合 | 商集合 | |
全ての集合 | 全ての関係 | 一対一対応 | 空集合 | ||||
全ての群 | 全ての群準同型 | 群同型 | 零群 | 部分群 | 商群 | ||
全ての位相空間 | 全ての連続写像 | 同相 | 一点空間 | 空位相空間 | 部分位相空間 | 商位相空間 |
圏(category)とは以下の4つのデータからなる.
これらは以下の2条件を満たす.
圏を与える.
射 に対し,をの始域(domain),をの終域(codomain)と呼ぶ.
を与えると,個の射の合成がwell-defined:
を与える.
射 が
同型射のretraction・切断は,の逆射.
がの分裂モノ射,がの分裂エピ射のとき, より,の全てのretractionと切断はの逆射であり,それらは全て等しい.
を与える.
射 について, に対して
以下は同値
圏,対象 を与える.分裂モノ射かつエピ射 が分裂エピ射となることを示せばよい.の(任意の)retraction に対し, を満たす.はエピ射だから,
ある圏から別の圏を作る方法を考える.
圏の全ての射の始域と終域を入れ替えた圏をの反対圏(opposite (/dual) category)と呼び,と表す.対象と射は明示的には以下:
反対圏の定義はかなり単純だが,(今までの数学も含め)かなり頻繁に表れている.
その最たる例が,射に関してある性質を満たすものを,元の圏だけでなく反対圏でも考える場合できる.これは上記の始域と終域の他,他のも単射と全射,部分集合と商集合等々,例を挙げるとキリがない.このようなものを双対的な概念,等と呼ぶ.
反対圏が自分自身と同型になる場合もあるが,そうでない場合は二つの命題を一つの証明で示せるため,以下でもしばしば現れる.
圏をを与える
(共変)函手((covariant) functor) とは以下の2つのデータからなる.
これらは以下の2条件を満たす.
圏を与える.
を与える.
圏を与える.
とする圏を圏の圏と呼び,と表す.
集合を集めたものは集合ではないように,全ての圏を集めたもの は,集合の集まり 等に比べて非常に大きい……ということまではわかったが,何か特別扱いすればいいのかもわからないし,普通にを圏と読んでいる文献もあったので気にしないことにする.
分裂モノ射 に対し, を満たすから, は をretractionに持つ分裂モノ射.他も同様.
を与える.
に対し,の射-射対応
を与える.
の対象-対象対応 が
を与えると,以下が成り立つ.
一般の函手の像は部分圏ではない.
を与える.
との間の自然変換(natural transformation) とは,以下の対応からなる.
これは以下を満たす.
自然変換は図式で以下のように表す.
を与える.
を与える.
と定義される自然変換 を,恒等自然変換(identity natural transformation)と呼ぶ.
圏を与える.
とする圏をからへの函手圏(functor category)と呼び, や と表す.
を与える.
と定義される函手を,からへの定函手(constant functor)と呼び, と表す.
圏を与える.
以下で定義される函手 をのに関する対角函手(diagonal functor)と呼ぶ.
を与える.
を成分とする自然変換 をの水平合成(horizontal composition)と呼ぶ.
この後定義する自然変換と函手の水平合成の記法を用いると,以下のようにも書ける:
圏を与える.
これが函手となることから,以下を満たす.
を与える.
自然変換で,以下の同値な条件のいずれか(ゆえに全て)を満たすものを自然同型(natural isomorphism)と呼ぶ.
このとき,函手のことも自然同型(natural isomorfic)と呼ぶ.
また, はにおいて自然(naturally in )と呼ぶ.
有名な例が,ベクトル空間の圏における
つまり,圏を与えると,以下が成り立つ:
圏を与える.
函手 で以下の同値な条件のいずれか(ゆえに全て)を満たすものを同値(equivalence)と呼ぶ.
このときとを同値(equivalent)と呼び,と表す.
このとき圏とのことも同値(equivalent)と呼び,と表す.
条件の同値性の証明のポイントは,うまくを(再)定義することで, と が互いに逆射となるようにすること.
圏を与える.
圏を与える.
を与える.
とする圏を,とのコンマ圏(comma category)と呼び, 等と表す.
を与える.
を与える.
圏を与える.
恒等函手 から へのコンマ圏 ,同じことだがからへの函手圏 を射圏(arrow category)と呼ぶ. と表すこともある.明示的には,
とする圏のこと.
を与える.
wikipediaにそう書いていたので,後述の表現のことを書いておいたが,局所的小圏じゃないのにhom函手と読んでいいのかは疑問.ただ写像として定義できていそうな気はする.
圏を与える.
函手の組 が以下の同値な条件のいずれか(ゆえに全て)をみたすとき,をの左随伴(left adjoint),をの右随伴(right adjoint)と呼び, と表す.
圏を与える.
函手の組 に対して,以下は同値.
分裂モノかつエピ射は同型射であったから,が共に埋め込みであることと,が自然同型であることは同値.
圏の一覧にもある通り,集合(と写像)の圏とは,全ての集合を対象,全ての写像を射とする圏のこと.
一般の圏の対象に対し,元をとってくる操作は定義されていない.集合の圏でその代わりになるのは,単一元集合から,集合への射 である.
その他集合の公理系を射の性質のみを用いて表せることをみよう.
集合(と写像)の圏とは,informalには圏であり,かつ以下を満たすもののこと.
ちなみに正確には以下のようになるらしい:
一般に圏の対象や射は集合よりも大きい集まりも許されているが,集合であると仮定したい場合もあるので,いくつか用語が定義されている.
圏を与える.
圏を与える.
が局所的小圏と圏同値のとき,を本質的小圏(essentially small category)と呼ぶ.そうでない場合は本質的に大きい圏(essentially large category)と呼ぶ.
集合の圏は,
米田の補題は局所的小圏の解析の方法を示すもので,圏論において非常に重要な結果とされる.それを示しつつその応用を考えていく.
を与える.
局所的小圏を与える.
を与える.
そもそも左辺が集合であることも非自明な気はするが,集合であることの証明の仕方がわからないので認めておく.
抽象度が高いので難解に感じるかもしれないが,証明自体は積圏からの函手(それぞれ )の間の自然同型の存在を示すだけなので,意外と簡単だったりする.
2つの命題は互いに双対なので,前者を示す.
2つの写像(集合の圏の射)を と定義する.まずは,それぞれの写像の返り値が終域の元になっていることを確認する.
あとは,が自然同型であることを示せば良い.まずはが自然変換であることを示す.
最後に, が互いにの逆射であることを示す.
米田埋め込みは,米田の補題をで表現される反変hom函手に対して考えたときの,米田の補題の証明にて定義した, に等しい.米田の補題の主張よりこれは全単射.
局所的小圏を与えると,対象の同型と,共・反変hom函手の自然同型は同値.つまり,以下が成り立つ.
米田埋め込みは埋め込みであり,埋め込みと同型は一対一対応であることから従う.
局所的小圏を与える.
表現可能前層の方を示す.
圏を与える.
函手 のことを型の図式(diagram of type )と呼ぶ.
このときのことを添字圏(index category)と呼ぶ.
が小圏のとき,小さい図式(small diagram)と呼ぶ.
が有限のとき,有限な図式(finite diagram)と呼ぶ.
を与える.
を与える.
を与える.
を与える.
を与えると,(唯一の)図式 の
の極限の射影の集まりは空自然変換である.の極限の普遍性のうち,非自明な部分を書き下すと となり,これは に対する終対象の定義に他ならない.余極限も同様.
を与える.
図式 の
を与える.
図式 の
を与える.
押し出しは「余引き戻し」ではないので注意.
を与える.
圏を与える.
と書いているものは,対象が一つだけだった場合は吸収元となる.吸収元の一意性に対応するのは以下:
圏を与えると,以下が成り立つ.
より前者の主張が言える.後者の仮定では,任意ので成り立つ.ゆえに は零射である.同じことを零射 に対して考えることで,零射は一意であることが言える.
を与える.
圏を与えると,以下が成り立つ:
を与える.
射の組 が以下を満たすとき,
と呼ぶ:
圏を与える.
の弱分解系(weak factorization system)とは以下のデータからなる.
これらは以下を満たす.
を与える.
射の組 が以下を満たすとき,とは直交する(orthogonal),と呼び と表す.
を与えると,以下が成り立つ:
圏を与える.
の直交分解系(orthogonal factorization system)とは以下のデータからなる.
これらは以下を満たす.