Lie代数

嘘じゃないよ

定義

Lie代数

𝕂を与える.

𝕂上のLie代数(Lie algebra)とは,以下のデータからなる.

  • 𝕂-線型空間𝔤
  • Lie括弧(Lie bracket)(または括弧積)と呼ばれる𝐴上の二項演算 [ , ] : 𝔤 × 𝔤 𝔤

これらは以下の条件を満たす.

  • Lie括弧は𝕂-双線型.つまり,
  • Lie括弧は交代性を満たす.つまり, 𝑥 𝔤 , [ 𝑥 , 𝑥 ] = 0
  • Lie括弧はJacobi恒等式を満たす.つまり, 𝑥 , 𝑦 , 𝑧 𝔤 , [ 𝑥 , [ 𝑦 , 𝑧 ] ] + [ 𝑦 , [ 𝑧 , 𝑥 ] ] + [ 𝑧 , [ 𝑥 , 𝑦 ] ] = 0

Lie括弧の反交換律

を与えると,以下を満たす. 𝑥 , 𝑦 𝔤 , [ 𝑥 , 𝑦 ] = [ 𝑦 , 𝑥 ]

証明

0 = [ 𝑥 + 𝑦 , 𝑥 + 𝑦 ] = [ 𝑥 , 𝑥 ] + [ 𝑥 , 𝑦 ] + [ 𝑦 , 𝑥 ] + [ 𝑦 , 𝑦 ] = [ 𝑥 , 𝑦 ] + [ 𝑦 , 𝑥 ]

準同型

を与える.

以下の条件を満たす𝕂-線型写像 𝑓 : 𝔤 𝔥 (Lie代数)準同型と呼ぶ.

  • 𝑥 , 𝑦 𝔤 , 𝑓 ( [ 𝑥 , 𝑦 ] ) = [ 𝑓 ( 𝑥 ) , 𝑓 ( 𝑦 ) ]

Lie代数の圏

対象を全てのLie代数の集まり,を全ての準同型とするLie代数の圏と呼び, 𝐋𝐢𝐞𝐀𝐥𝐠 𝕂 と表す.

自明Lie代数

𝕂を与える.

零線型空間{0}は,Lie括弧として唯一 [ 0 , 0 ] = 0 を持ち得る.これを定義とするLie代数{0}自明なLie代数(trivial Lie algebra)零Lie代数(zero Lie algebra)と呼ぶ.

包絡代数

交換子

を与える.

交換子(commutator)と呼ばれる𝐴上の二項演算 [ 𝑥 , 𝑦 ] 𝑥 𝑦 𝑦 𝑥 を定義すると,𝐴は交換子をLie括弧とするLie代数をなす.

このとき,結合代数準同型Lie代数準同型に写るから,結合代数の圏からLie代数の圏への函手をなす.

特にこの函手は左随伴を持つ.これにより任意のLie代数に対し,結合代数的な積を(同型を除いて)一意的に定めることができる:

包絡代数

を与える.

𝔤(普遍)包絡代数((universal) enveloping algebra)とは,以下の2つのデータからなる

これらは以下を満たす.

  • 𝑥 , 𝑦 𝔤 , 𝑖 ( [ 𝑥 , 𝑦 ] ) = 𝑖 ( 𝑥 ) 𝑖 ( 𝑦 ) 𝑖 ( 𝑦 ) 𝑖 ( 𝑥 )
  • (普遍性)任意の(単位的)𝕂-結合代数𝐴および上式を満たす任意の線型写像 𝑓 : 𝑉 𝐴 に対して,以下の図式を可換にする𝕂-代数の準同型 𝑓 : 𝑈 ( 𝑉 ) 𝐴 が一意的に存在する

同型定理

Lie代数の圏部分対象,正規対象,商対象を確認し,同型定理を示す.

部分Lie代数

を与える.

部分集合𝔥𝑔で,𝔤と同じ演算に関してLie代数となるものを,𝔤部分Lie代数(Lie subalgebra)と呼ぶ.つまり以下を満たす: 𝔥 + 𝔥 , 𝕂 𝔥 , [ 𝔥 , 𝔥 ] 𝔥

生成系

を与える.

𝑋を含む𝔤部分Lie代数のなかで最小.これを𝑋で生成される部分Lie代数と呼ぶ.

特に𝔤に一致するとき,𝑋𝔤生成系(generator)と呼ぶ.

イデアル

を与える.

部分集合𝔦𝔤𝔤イデアル(ideal)であるとは,以下を満たすことを言う.

自明なイデアル

を与える.

{ 0 } , 𝔤 𝔤 𝔤イデアルとなる.これらを𝔤自明なイデアル(trivial ideal)と呼ぶ.

それ以外を非自明(nontrivial)と呼ぶ.

正規閉包

を与える.

正規閉包(normal closure)と呼ぶ.

正規化代数

を与える.

𝑋で生成される部分Lie代数𝔥としたときの 𝑁 𝔤 ( 𝑋 ) { 𝑥 𝔤 | [ 𝑥 , 𝔥 ] 𝔥 } 𝑋正規化Lie代数(normalizer)と呼ぶ.

𝑁 𝔤 ( 𝑋 ) は,𝔥イデアルとなるようなもののうち,最大なもの.

同型定理

を与えると,以下が成り立つ.

  • に対し,
    • 𝑓の核 𝑓 1 ( 0 𝔥 ) 𝔤イデアル
    • 𝑓の像 𝑓 ( 𝔤 ) 𝔥部分Lie代数
    • 任意の𝔤イデアル𝔦に対し, 𝔦 ker 𝑓 を満たすとき,以下を満たす: ∃! 𝑓 : 𝔤 𝔦 𝔥 , 𝑓 𝑝 = 𝑓 つまり以下の図式を可換にする. 特に,自然な同型 𝔤 ker𝑓 𝑓 ( 𝔤 ) が存在する.

自由・忘却随伴

自由Lie代数

𝕂を与える.

𝕂-線型空間𝑉上の自由Lie代数(free Lie algebra)とは,以下のデータからなる:

  • 𝕂-線型空間𝑉 𝑛 𝑉 ⨿𝑛
  • を線型に拡張したもの.

自由Lie代数の普遍性

を与えると,以下の自由Lie代数の普遍性を満たす:

に対し,Lie代数準同型 𝑓 : 𝔙𝔤 が一意的に存在し,以下を満たす: 𝑓 𝑖 = 𝑓 つまり,以下の図式を可換にする.

可換

可換

を与える.

  • 𝑥,𝑦 𝔤 [ 𝑥,𝑦 ] = 0 を満たすとき,𝑥,𝑦は互いに可換(Abelian)と呼ぶ.
  • [ 𝔤,𝔤 ] = 0 を満たすとき,𝔤可換(Abelian)と呼ぶ.

自由可換Lie代数

𝕂を与える.

𝕂-線型空間𝑉上の可換Lie代数(commutative Lie algebra)とは,以下で定義されるLie代数のこと:

  • 𝕂-線型空間𝑉
  • Lie括弧 [ , ] : 𝑉𝑉 𝑉 , [ 𝑥,𝑦 ] = 0

可換Lie代数の普遍性

可換Lie代数のと線型空間の圏は自然同型

証明

任意の𝕂-線型空間 𝑉𝑊 に対し,それぞれの自由可換Lie代数 𝔙,𝔚 とする.また,任意の線型同型写像 𝑓 : 𝑉𝑊 に対し,

中心化代数・中心

を与える.

  • 𝑍 𝔤 ( 𝑋 ) { 𝑥 𝔤 | [ 𝑥 , 𝑋 ] = { 0 } } 中心化代数(centralizer)と呼び,𝔤部分Lie代数をなす.
  • 𝑍 ( 𝔤 ) 𝑍 𝔤 ( 𝔤 ) = { 𝑧 𝔤 | [ 𝑧 , 𝔤 ] = { 0 } } 𝔤中心(center)と呼び,𝔤イデアルをなす.

部分Lie代数,イデアルになることの証明

トーラス

を与える.

𝔤の有限次元(?)部分線型空間𝔥

  • 𝔤可換部分Lie代数,あるいは同じことだが自分自身を𝔥中心とする,つまり 𝑍 𝔥 ( 𝔥 ) = 𝔥 を満たすものをトーラス(torus)と呼ぶ.
  • トーラスのうち極大,あるいは同じことだが𝔥中心化代数𝔥に一致するもの,つまり 𝑍 𝔤 ( 𝔥 ) = 𝔥 を満たすものを極大トーラス(maximal torus)と呼ぶ.

ルート空間分解

を与える.

𝔤𝔥に対するルート空間分解(root space decomposition)とは以下のデータからなる:

  • 𝔥ルート格子(root lattice)と呼ばれる𝔥の双対線型空間 𝔥 の部分集合 𝛬 𝔥 { 0 }
  • 𝔥ルート空間(root space)と呼ばれる𝔤の部分空間の集まり { 𝔤 𝛼 { 𝑥 𝔤 | 𝔥 , [ , 𝑥 ] = 𝛼 ( ) 𝑥 } } 𝛼 𝛬 { 0 }

これらは以下を満たす:

  • ルート空間の直和が𝔤に等しい,つまり以下を満たす: 𝔤 = 𝔤 0 𝛼 𝛬 𝔤 𝛼

𝛼 𝛬 𝔤𝔥に対するルート(root)と呼ぶ.また,極大トーラスの定義より 𝔤 0 = 𝔥 である.

自己準同型

自己準同型・同型

を与える.

  • 𝔤上の準同型のことを,自己準同型(endomorphism)と呼ぶ.自己準同型の集合をend𝔤と書く.
  • 𝔤上の同型のことを,自己同型(automorphism)と呼ぶ.自己同型の集合をaut𝔤と書く.

内部微分

を与える.

𝑥𝔤に対し, ad 𝑥 [ 𝑥 , - ] der 𝔤 𝔤内部微分(inner derivation)と呼ぶ.

表現論の準備?

三角分解

を与える.

𝔤三角分解(triangular decomposition)とは,以下のデータからなる.

これらは以下を満たす.

  • 𝔤 = 𝔫 𝔫 0 𝑛 +
  • 𝔫 0 は極大トーラス.
  • ルート空間分解に関する何か

半単純Lie代数

定義と基本性質

単純Lie代数

  • Lie代数のうち,(自明なイデアルをちょうど2つ持ち,かつ可換でないものを,単純(simple)と呼ぶ.
  • 単純Lie代数の直和で表されるものを,半単純(semisimple)と呼ぶ.

Lie代数の圏の単純対象のうち,一次元可換Lie代数のみ除かれていることに注意.